私の嘘と彼女の真実
もしもの話をしても仕方がない。
今、和史は親友の旦那で、季実枝はそんな彼と不倫している。

「そう、だよな。
……つまらない話をした、忘れてくれ」

勢いよく起き上がり、彼は服を着ていく。
季実枝も服を着て、自分の部屋から帰る彼を見送った。

「……そんな、惑わせるようなこと、言わないでよ」

パタンと閉まったドアに話しかける。
嫌って別れたわけではない。
和史とのセフレ時代も、別れたあとだって男性から声をかけられたこともあった。
しかし、誰とも付き合わなかったのは彼に未練があったんじゃないかと言われれば、否定はできない。
だからこそ、一緒の秘密を抱えるなら季実枝がいいと言われ、嬉しくなって関係を承知した。
なのにさらにあんなことを言われたら、心が揺れ動く。

「また、好きになっちゃうじゃん」

自分の口から落ちていった言葉に、季実枝は苦笑いしかできなかった。



和史と不倫を始めて三ヶ月。
その日、季実枝は友子に呼び出しされていた。
待ち合わせのカフェ、にこにこ笑う友子を前にしてまさかバレたんだろうかと居心地が悪い。

「あのね。
季実枝ちゃんにお願いがあって」

――きた。

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