私の嘘と彼女の真実
「本当に出張だったんだよ」

「カードの履歴に残ってるホテルが、聞いてた出張先じゃなくてこの近くなのも気のせいだよね?」

「……気のせいだよ」

笑顔で季実枝を追い詰めていく友子が、怖くて怖くて堪らない。
早くこの場を逃げだしてしまいたいが、かろうじて留まった。

「そうだよね、かずくんが浮気するはずなんてないもの。
だって、私はかずくんの赤ちゃんを身籠もっているんだから」

「……え?」

信じられない事実を聞き、勢いよく顔を上げる。
友子はうっとりとまだ膨らんでいないお腹を撫でていた。

「なかなか赤ちゃん来てくれなくて焦ったけど、ちゃーんと私のところにも来てくれたわ」

嬉しそうに友子は話し続けるが、季実枝の耳には少しも届いていなかった。
友子とはできないと言っていた。
だから自分を、自分だけを抱いているのだと思っていた。
なのに友子に子供ができたとは、理解できない。

「……そう。
おめで、とう」

「ありがとう、季実枝ちゃん」

勝ち誇った顔で友子が笑う。
自分は今、どんな顔をしているんだろうか。
上手く笑えている自信が、季実枝にはなかった。

店を出て、友子と別れる。
< 30 / 32 >

この作品をシェア

pagetop