近くて遠い幼なじみの恋
「お前は本当に美津(みつ)さんの孫じゃのう。泣きそうな顔は美津さんそっくり」

美津とは3年前に病気で無くなった祖母の名前

「鰯に取られたがな。ククッ」

懐かしいのか寂しいのか昔を思い出して笑うじいちゃんは楽しそう。

「ばあちゃんの事…」

「大昔の話じゃ。今は死んだ婆さんが1番。なぁ、幸。将来泣くか笑うかはお前次第。来週までに考えなさい」

来週とはきっと婚約披露パーティまでにと言う事

「じいちゃん…うん、考えてみる」

じいちゃんに深々と頭を下げてもう一度大きい門と中に見える婚約者を目に焼き付けた。





「魚幸でーす!注文の品届けに来ましたー」

父は私の代わりに配達に行こうとするけど逃げたくなくて特に響旅館の配達は自分で行くようにしてる。

「さっちゃーん、そこの持って行きなよ」

手を放せない春昌さんが顎をクイって動かして電話横に置いてある袋を指した。

「えー?良いのー?」

高級店の袋の中身はチョコレートの箱の包み

「良いの良いの。私が責任持つから」

私の声に奥から女将さんが顔を出して袋に次から次へと他のお菓子を入れて行く

「おばさん!そんなに食べたらフグみたいになっちゃうって!!」

「まあ!さっちゃんはちょっと太らなきゃ」

ニコニコ微笑んで「あら、これも」と言いながら入れて行くから袋はパンパンに。

「お前、それ入れすぎだろう。」

「そうかしら?」

通りすがりの旦那さんで社長であるあーちゃん父が止めに入った

「おじさん、こんにちは!」

「こんにちは。さっちゃん、これ勝(かつ)に持ってて」

勝とはうちの父の事でおじさんとはやはり幼なじみ。

「良いの?」

手渡されたDVDには【愛、ときどき晴れ5話】手書きで書かれた恥ずかしいタイトル名

「はははっ昨日泣いてたのこれか…」

「最近寝不足だ」と言いながらも止めれないドラマらしく昨日も父がテレビを占領して見てた

「おかしいわよねー。大の大人がこんなドラマにハマるなんて」

昨日うちの母も父にテレビを占領されてイライラしながら女将さんと同じセリフ言ってた
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