近くて遠い幼なじみの恋
「ごめん」

天井を見上げて出て来た言葉に軽くショックではあるけど分かってた当たり前の答え。

婚約者いるからね…

「あ、こっちこそ、ごめんなさい」

一気に顔が熱くなる
後悔しないようにとは思ったけどこの後どうすれば良いとか考えて無かった。
そもそもベッドに縛り付けられた状態で逃げる事も出来ないし

「あぁ、勘違いさせたよな。」

何が勘違いなのか分からずただあーちゃんを見つめるだけ。

「さちには魚屋諦めて貰うからごめんて事」

魚屋を諦めて貰うって、、それって

「簡単に言えば…俺も好きって事。さち…一緒にイギリス行くか?いや違う…無理矢理でも連れて行くから」

あーちゃんも私を好き?
イギリスに私も行って良いの?

質問がたくさんあり過ぎて呆然と目の前の愛する人を見つめて1番大事な事を思い出した。

「こん、婚約者は?!ん…っ」

私が話そうと口を開くとあーちゃんの顔が近付いて唇に軽くキスをした

「あああ、あーちゃん!!答えがない!!!!」

キスの余韻なんてもろともせず病室で叫んでしまってあーちゃんは苦笑い。

「婚約は解消する。これから大変になるけど一緒に頑張る覚悟ある?」

そんなの!
決まってる!!!

「頑張る!!絶対頑張る!!絶対!」

「そんなには頑張らなくても…」

そう言って微笑んで今度は深くキスを落とした。




「「退院おめでとう!!」」

久々の【虎成】に全員集合出来たのは1ヶ月後。

床屋の大輝、肉屋の颯太、花屋の花梨、八百屋の華、商店街会長の娘の佳奈とそして高級旅館のあーちゃんと魚屋の私

「これから戦うの?あ、颯太それ私の!」

熱々の揚げ出し豆腐を奪い口に運ぶ花梨

「あのじいちゃん達か…俺なら無理」

ひぃーッと身体をわざと震わせて口にする大輝

「絢も大変だな」

颯太は花梨から揚げ出し豆腐を奪い返してあーちゃんを見た

「まあな。でもさちには俺しか居ないだろ」

「男連中だけで盛り上がらないでよー!」

「ごめん、ごめん佳奈!」

「絢、さちどうにかして!左手じゃ、ほらまたこぼして」

「食べるの大変なんだもん…」

骨折したギブスはまだ取れるわけもなくスプーンを左手に持ち食べ物と格闘中
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