近くて遠い幼なじみの恋
「さちは絢くんの隣!!もう私が食べれない」

ぷんぷんと怒る佳奈を宥める大輝はあーちゃんに早く行けと腕で押す

「ほらな。さちは俺がいないとダメだもんな。ほら、あーん」

これが狙いで隣に座らなかったんだ!!

ムカつくけど箸に乗せられたお刺身は美味しそうでパクっと食い付いた

「か、からーい!!!!!!!!鼻痛い!!ツーンて」

わさびをこれでもかって乗せてたに違いない。

「あーちゃん酷い!!誰かお水」

ビールで潤したくても病み上がりで飲む事も出来ず華から渡された水をストローで飲む

「絢、もっと献身的にやってやれよ」

涙目の私の目を大輝がティッシュで拭ってくれる

「大輝〜!ありがとう」

お礼を言う私が面白くないあーちゃんはムスッとしながら私の耳元で、

「そんなに大輝が良いなら…これも要らないって事だよな」

あーちゃんの手には青いベルベットの箱。その中から光り輝く指輪を取り出してヒラヒラと見せつける

「絢く〜ん!幸に大輝譲るからそれちょうだい」

「あーちゃん!!それっそれそれ!!佳奈ー、指輪私のー!!」

半泣きの私と佳奈の意地悪に大輝は謝りながらご機嫌を取り続けてる

「プロポーズの言葉は〜?」

酔いも良い感じの華が割り込んで颯太も手拍子であーちゃんを煽る

「は、はは恥ずかしいから〜!あーちゃん指輪〜」

指輪を取ろうとする私の左手をあーちゃんは捕まえて左手の薬指に指輪を嵌めた。

「さち」

「あーちゃん!!結婚したいですぅぅぅ!!」

甘く囁いて真顔で見つめてくるから我慢出来ずついつい私が先走ってしまって皆んな目が点

「「幸〜」」

皆んな爆笑と拍手

「まあ、目覚まし時計4つは勘弁な」

あーちゃんは苦笑いしながら私のおデコに軽くキスをした




それから1週間後


祖母の遺品の鞠と矢羽根模様の色留袖を着付けて貰い響旅館の門の前に立った

この門を通る時は自分の収入でと決めていたのにまさかこんな形で通る事になるとは。

敷居が高いと諦めていた旅館の入口には微笑む大好きな人が待ってる

玉砂利を踏みしめながら1歩1歩前に進みあーちゃんの手を取った
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