ライバル×あて馬=勝ち確最恋方程式
プロローグ

失恋バレンタインデー




少女漫画を読んで、ヒロインの頑張る姿にいつも背中を押されていた。

学校一のイケメンとの恋、年上の先輩との恋、部活内での恋。


私が一番好きだったのは、幼なじみ同士の恋愛だった。もちろん最後はハッピーエンドの幸せなもの。

いつか私も……なんて気持ちだけが大きくなっていって。

けれど伝えられずに高校生になっていた。


 ***


「桜葉くんのことが、好きです……っ」

その日はバレンタインデー。

もうとっくに授業は終わって、夕日のまぶしい光が校舎の中を照らす時間帯。


今日は夜から雪が降るという予報で、部活動も早めに終了する。

タイミングを見計らって教室を出たのに、予想外のことがあって遅れてしまった。


早く、早く……!

息を切らして向かった先で見つけたのは、幼なじみの桜葉景(さくらばけい)がとある女子生徒に告白されている光景だった。


その子の名前は知っている。
三組の白田こころさん。


丸い眼鏡と今どき珍しいぶ厚いおさげ髪。
普段から目立つようなタイプではなくて、むしろ教室の隅っこでひとりぽつんと本を読んでいるような子。

大きな声を出したところさえ聞いたことがなかった白田さんだけど、自分の気持ちをはっきりと伝えていた。

声がちょっと弱々しくて、チョコレートが入っているであろう可愛らしい包装の箱を持つ手も同じように震えていた。

前に女子トイレで白田さんのことを「地味子」と笑っていた生徒がいた。

でも、私には……頬が染まった白田さんの横顔が可愛く、眩しく見えていて。


そして、彼女の想いは無事に結ばれることを、私は密かに知っていた。


「俺も……白田さんが好きだ」



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