ライバル×あて馬=勝ち確最恋方程式


 景の嬉しそうな声が聞こえた瞬間、私の手にあった箱が音を立てて落ちた。

「やばっ……」

 しゃがみ込んで、箱を拾う。
 そのあと校舎の影から二人の様子を確かめると、音に気づいていないのか照れた様子で笑いあっていた。

「……はあ、ほんとに、なにやってるんだろう」

 土で汚れたレース模様の箱を見つめてぽつりとつぶやく。
 昨日の夜から何度も作り直して、一番上手な出来栄えのものを箱に詰めた。

 慣れないリボンも巻いて、気づけば夜中になっていて慌ててパックをして眠った。

 今日が勝負の日だったから。
 ずっと伝えられなかった想いを、ようやく景に伝えようと思っていた。

 でも、もう遅かったんだ。
 景はいま、私でも見たことがないような甘い視線を白田さんに向けて、自分の気持ちも伝えていた。

 高一の冬。
 バレンタインデーの今日、私は幼い頃から想いを寄せていた幼なじみに失恋をしたのだ。


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