お邪魔虫にハッピーエンドを



 景の変化に胸がざわつき始めたのは、それからすぐのことだった。


『……世話になったお礼に物とか、急に渡しても引かれないか?』
『それって、プレゼントってこと?』
『まあ、そんな感じ。杏子だったらどういうのが喜ぶ? その子の好きな物とかよくわからないし』


 そのとき、嫌な予感が頭をよぎった。
 その子って……それは、誰のこと?

『……杏子?』


 無言になってしまった私に、景の不思議そうな声が響く。

 私は慌てて会話を繋げた。

『その、プレゼントしようとしている子は、景の学校の友達? 女の子、なんだよね』
『……友、達。そうだな、白田さんは友達だ』

 景の言葉はまるで、景自身が自分に言い聞かせているように感じた。

『きゅ、急にプレゼントって言ってもな〜。私はその、白田さんって子知らないし。どんな子なの?』
『どんな子……』


 胸騒ぎはいつまでも止まらなかった。
 初めて景の口から女の子の話題が出たからだろうか。

 でも、それだけじゃない予感のようなものが確かにあって。


『いつも、頑張ってる子、だと思う』


 電話越しでもわかる和らいだ空気。

 この予感は、とてつもなく嫌なやつだ。




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