観念して、俺のものになって


それから朝から何度も確認している、タイムスケジュールが書かれた進行表を眺めた。

でも、その内容は緊張しすぎているためか全く頭に入ってこない。


進行表の一番下に印字されているのは、芸能人がよく挙式を上げている超有名なホテルの名前。それを見たらさらに緊張感が増してきた。

 
……こうなったらお式が始まるギリギリまで『仁科隆聖』先生の本でも読むか!うん、緊張を解きほぐすためには仕方がない!!

なんだかんだと言い訳をつけて、私がこっそり鞄に入れてきた文庫本を取り出したその時だった。


コンコン、と扉をノックされて反射的に立ち上がる。

「は、はいっ!!どうぞ!」


扉に向かって声をかけ、体を向ける。真っ白でフワフワのドレスは、あまり体を動かすのに向いていない。

動き回るなら付き人のスタッフさんを呼ぶべきなんだろうが、生憎紬さんの支度の確認でいまこの部屋にいるのは私だけ。

ドレスをどう持ち上げて歩こうかと考えているうちに扉が開いた。


その扉から顔を覗かせたのは、眼鏡をかけ白い髭を蓄えた、見たことのないおじいさんだった。

「えっと……?」


戸惑って首を傾げると、おじいさんはにこやかな笑顔を浮かべ私に問いかけた。

「失礼する。ここは芦屋まひるさんの控え室で間違いないか?」

「は、はい!!」

 全く面識がないけれど私の名前を知っているということは、このおじいさんはきっと紬さんの親戚に違いない。


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