円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 寄宿舎で同室のリリーとマーガレットから、子作りの真実を聞かされたのはその数日後のことだった。

 ええぇぇぇぇっ!
 知らなかった…いや、男女のそういう行為自体に関する多少の知識は持っているのだけれど、それは「いかがわしい行為」であって、わたしにとっては「子作り」に直結していなかったのだ。
 ちなみに、もちろん経験はない。

 驚きすぎて目を回しそうになっているわたしを見て、二人が笑っている。
「ステーシアさん、本当に知らなかったの?」
「天然にもほどがあるわ」

「だって…だって…天使様は?」

「そんなの子供だましに決まってるでしょう。幼い子に聞かれたときに、親がごまかすための常套句よ」

 そんなあぁぁっ。
「わたし、そうとは知らず、レイナード様に毎日しようとか、一日中でも望むところだとか言ってしまったわ!」

 頬が熱い。
 たぶんわたしは今、これ以上ないぐらいに真っ赤になっているに違いない。

 だからあの時レイナード様も真っ赤になっていたのね!

「すればいいじゃない」
「すぐに赤ちゃんを授かるかもしれないわね」

 もうっ、なんて事を言うのよ!勝手なこと言わないでちょうだい。

「どうしよう、どうしようっ、どうしたらいいのぉぉぉっ!」

 その夜、わたしの悲痛な雄たけびが女子寄宿舎に響き渡ったのだった。



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