婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「お、お、お、お、女の子なのか?」

 公爵も、先ほどの侍女と同じように激しく動揺していた。

「はい……」
 サフィーナは嬉しそうにニッコリと微笑む。やはり、どこか女児を望むという欲があったのだろう。人間、幸せになると、今とは違う環境を望む傾向がある。元気であれば男女どちらでもいいと思いながら、男児を三人育ててきた彼女は、女児に憧れもあったのだろう。
 生まれたての娘は、真っ白な産着を着せられていた。

「その、確認をしてもいいだろうか?」
 生まれたての赤ん坊は、顔を見ただけでは性別がわからない。

「何をですか?」
 サフィーナはこの夫が何を言い出したのだろうと思いながら、そう尋ねていた。

「その、女の子とであることを……」
 この赤ん坊が女の子であることを確認する方法は、今のところ一つしか思い当たらない。

「そうですね。おしめを替えるときに、確認してくださいな」
 サフィーナがニッコリと笑えば、公爵もそうだな、と呟く。
「それよりもあなた。抱いてあげてください」

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