婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 エメレンスはエリックから紙の束を受け取った。びっしりと数値が書きこまれているそれは、ここ二年間の記録のようだ。その隙にリューディアは眼鏡をかける。

「リディアさん。眼鏡、かけちゃったんですか? もったいない」
 というエリックは本当にもったいないと思っているのか、悔しそうな表情をしていた。チラリとエメレンスの視線が飛ぶ。と同時に彼の興味をリューディアからそらす為にも、エメレンスは口を開いた。

「エリック、これはいい資料だ。ありがとう。今日はもう遅いから、帰ろう」
 エメレンスがそう言ったとき。

「なんだ、お前たち。まだ残っていたのか? ほら、もう帰れ、帰れ」
 周辺の見回りをしていたヘイデンが戻ってきたようだ。彼はいつも帰る前に、事務所の周辺と現場入り口の周辺の見回りをしてから帰宅する。

「あ、部隊長。今、エリックからこれを受け取ったところです」

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