婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 だから何のために、と問われて「顔を隠すために」と、リューディアには答えられなかった。
「あの、その。採掘現場はいろいろと危険ですから。その、目を守るためです……」

「なるほど。採掘師も採掘するときはゴーグルかけますもんね。そういうことか。僕はフードしかかぶってないけど、やっぱり眼鏡をかけたほうがいいのかな……」
 エリックはぶつくさ言い出した。どうやら、リューディアの苦しい言い訳に納得したようだ。

「それよりもエリック。わざわざここに来たってことは、何か用があったんだろう?」
 エメレンスは、このエリックにリューディアの素顔を見られてしまったということが、非常に悔しかった。だが、それを顔に出すようなことをせずに、淡々と尋ねる。

「あ、そうそう。そうでした、レンさん。肝心の大事な用事を忘れるところだった。はい。以前頼まれた、採掘量のメモの写しです。採掘師たちは給金が絡んでいるから、誰がいつどこでどのくらい掘ったかっていうのを記録しておくらしいんですよ。月々の給金と比較するためにね。ガイルが写しを作ってくれたので、預かってきました」

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