婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「大丈夫? ディア」
 ずっと彼女の側に立っていた彼は、顔を寄せて尋ねた。

「あ、はい。なぜか今日、エリックさんがあのように声をかけてくださることが多くて。その、今までそのようなことが無かったので。その、どうしたらいいかがわからなくて」

「誘われても、ディアが嫌なら嫌だとはっきり口にしたほうがいいよ。曖昧な態度は逆に相手に失礼だと思う」

「それで、エリックさんは気を悪くされませんか?」

「大丈夫じゃないかな?」
 それは男の勘。彼はリューディアに本気ではない。あわよくば、と思っているだけ。彼の気持ちはわからなくはないために、エメレンスもあまり強くは言えない。だからリューディアには「自分の気持ちを正直に言うこと」ということくらいしか言えなかった。

「ですが、なぜエリックさんは、あのように声をかけてくださるようになったのでしょうか……」
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