婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 リューディアはエメレンスと並んで帰路についた。採掘現場の周辺はとても静かだった。昼間は採掘師たちの怒号や採掘する音が響くこの周辺、今は作業が行われていないから、たまに吹き付ける風の音しか聞こえてこない。

「すっかり暗くなっちゃったね。危ないから、家の前まで送るよ」

「あ、はい。ありがとうございます」
 空には星が輝いていて、星明りでいくらかは明るいものの、この暗さを一人で歩いて帰るにはいささか不安があったリューディアにとって、それは有難い申し出だった。

「ボクがシャルコに来て驚いたのは、この空だ」
 唐突にエメレンスが空を見上げた。
「今にも星が落ちてきそうなくらい、星がたくさん見える」

「はい。わたくしも、この空が好きです。そしてこの街も。だからこそ、この街の生活の要である魔宝石を、あのように不正に利用して、傷つける人が許せません」

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