婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 リューディアの凛とした声が、朝の爽やかな空気に乗って響く。エメレンスは、これがあのリューディアなのか、とも思っていた。いつも自分は醜いと自信を失っていた彼女。その彼女が今、堂々とブルースが行っていることと向かい合っている。

「え、と。ま、はあ。そうですね。クズ石です。どうせ捨てるなら、貰おうかなと思って。えへへ……。オレみたいな若い採掘師って、まだ大したお給金ももらえないんですよ」

「それで、そのクズ石を売って、お金にしようとしているのですか?」

「ち、違いますよ。違いますよ」
 リューディアの鋭い追跡に、ブルースもつい怯み始めてしまう。

「でしたら、何のためにクズ石が必要なのですか? クズ石は魔力を取り込むことができないもの、魔力を取り込んだとしても形が歪なもの。その魔力を制御できないものなのです。だからこそ、クズ石と呼ばれている。それらを使う危険性をわかっているのですか?」

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