婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「リューディア嬢。君は、ブスなのだから、それ以上、私に近づかないでくれるか?」

「え?」
 一瞬、リューディアは何を言われているのか理解ができなかった。ただ、ブスという言葉が目の前のモーゼフの口から飛び出てきたことだけはわかる。

「君が側にいると、私はおかしくなる。胸が苦しくて、言いたいことも言えなくなる。君を一目見た時から、こんな状態だ」
 モーゼフは今も苦しそうに息をしている。
「なぜこうなるかわからなくて、ずっと考えていた。だが、すぐにわかったよ。それは君がブスだからだ」

 ブス、すなわち不細工。見目が整っていない、不格好な様。

「その顔を、私の前に見せるのをやめてくれないか? これ以上、君の顔を見ていたら、私はおかしくなる……」

「ごめんなさい……」
 ほろりとリューディアの目から、涙が溢れてきた。まさか自分の顔がモーゼフを苦しませている原因になっているとは思わなかったから。

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