婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「だから女は嫌いなんだ。泣けばいいと思っている。私は先に戻る。君は、その顔をなんとかしてから戻ってこい」

「はい……」
 去り行くモーゼフの後姿を見送ったリューディアは、ドレスが汚れてしまうのも関わらずにその場にうずくまった。

 ――ブス。

 モーゼフから言われた一言が頭から離れない。だから、涙が止まることなく溢れてくる。
 彼は婚約者だ。婚約者ということは、大人になったら結婚をする相手ということで、自分の両親のようにずっと一緒に暮らすことになるのだろう、と思っていた。
 だが、モーゼフはリューディアをブスと言い、彼女の顔を見たくないとまで言った。そのように顔を見たくないような相手と結婚をするというのは、どうなのだろう。一緒に仲良く暮らすことができるのだろうか。
 じっとうずくまっていたからか、リューディアは足が痺れてきた。だけど、怖くて立ち上がることができない。このままこの庭園に咲く花と一緒に、ここで風に揺れていたかった。

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