婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「リューディア」

 幼い声が聞こえて、リューディアは顔をあげた。

「エメレンス、さま……」

「ああ、よかった」
 と言う彼の息は弾んでいる。恐らく、走ってここまで来てくれたのだろう。
「兄上が一人でもどってきて。だけど、リューディアの姿が見えなくて。それで心配になって」
 だから、走って探し回ってくれたのだろうか。

「立てる?」
 エメレンスが手を差しだしてきたので、リューディアはそれに自分の手を重ねた。ぐっと彼女の小さな手を握りしめエメレンスは、力強く彼女の腕を引っ張る。

「あ、あぁっ」
 足が痺れていたからだろう。エメレンスに手伝ってもらって立ち上がろうとしたのに、リューディアはバランスを崩して前のめりになって倒れてしまう。そして目の前にエメレンスがいたのであれば、彼に覆いかぶさってしまう状態になって。彼もドシンと尻もちをついた。そして彼女の小さな身体をなんとか抱きかかえているエメレンス。

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