婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 リューディアは首を横に振る。
「モーゼフ殿下に嫌われていなかった。それだけわかれば充分です。もう、わたくしには、モーゼフ殿下への気持ちはありません」

「そういうことだ、エメレンス殿下。もう、この話は終わりにしよう。あまりディアの傷口を広げないでもらえるか? 俺にとっては可愛い妹なのでな」

「それを言ったら、ボクにとっても可愛いボクの好きな人です」

 ぶほっと思わずお茶を吹きだしそうになったのは、イルメリだった。黙ってこの三人の話を聞いていたのだが、ここにきてエメレンスが変化球を投げてくるとは思わなかったのだ。

「ん、んんっ」
 吹き出しそうになったことを誤魔化すように、イルメリは咳払いをする。
「エメレンス殿下、あなた、もしかして、リューディアに?」

「はい。気持ちを伝えました」
 エメレンスが堂々と答える。

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