婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「ごめんなさい、エメレンスさま……」

「リューディア。君に怪我なければ、それでいいよ」

「ですが、エメレンスさまが」

「ボクは大丈夫だよ。毎日、鍛えているからね」
 嘘か本当かわからないようなことを口にするのは、リューディアに心配をかけたくないからだろう。

「立てるかい?」
 エメレンスはゆっくりとリューディアの身体を支えながら、彼女を立たせた。
「素敵なドレスだったのに、汚れてしまったね」

「いえ、大丈夫です。きっと、わたくしにはこのように汚れた格好の方が似合っているのです」

「やはり、兄上と何かあったのかい?」

「いえ、何も……」

「そんな顔をして、何もなかったとは言わせない。何があったの? リューディアがきちんと話をしてくれるまで、ボクはリューディアのことを放さないよ」
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