婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「今日は、兄上に報告したいことがあって参りました」

「そうか。君たち、本当に()()()()()に来てくれた」

「兄上、ボクがいない間に、一体何が起こったのです?」
 それは、モーゼフの姿を捉えたエメレンスから零れた言葉。エメレンスでさえおかしいと思う。この兄の姿。
 何も無かったとは誤魔化せないような状況であることに、モーゼフは気付いているのだろうか。
 モーゼフは苦しそうに顔を歪めた。
「エメレンス。私の意識が飲み込まれる前に、術を……。頼む……」

「兄上、どういうことですか」

「レン。モーゼフ殿下は何やら強い力によって操られています。……恐らく、禁忌魔法」

「ディア。わかるのか?」

「はい」
 その瞳に力強い光を灯したリューディアは大きく頷く。
「この王城に来たときから、ここは変な感じがしました。国王陛下や王妃様も心配です」

「ディア。その、兄上にかけられているという術を解くことはできる?」

「わかりませんが……。やってみます」
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