婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 いつの間にかエメレンスはリューディアの右腕をがっしりと掴んでいた。

「エメレンスさま……」

「ねえ、リューディア。君とボクは同い年なんだ。だから、ボクのことはレンって呼んでってお願いしたつもりだったんだけど……」

「え、と……、レン、さま……」

「よくできました。で、兄上と何があったの?」

「それは……」

「ボクには言えないようなこと?」

 こくん、とリューディアは頷く。

「言えないようなことを兄上にされたの? そんなに酷いことをされたの?」

 違う、という意味を込めて、リューディアは首を横に振る。

「だったら、言えるよね」

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