婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 リューディアの目からポロリと大粒の涙が溢れ、繋がれた手の上に落ちた。すると、そこからまばゆい光が生まれ、二人を包み込む。

「ちょっと。一体何をやっているのよ」
 イライラしているような声と共に、ノックもなく部屋に入ってきたのは、()()フリート・メイソン。
「え? エメレンス殿下? と……、まさか……、リューディア?」
 フリートがリューディアを認識するのに時間がかかったのは、リューディアが眼鏡をかけていないから。あのリューディアと、このリューディアが同一人物であるとは思えなかったから。

「ちょっと、モーゼフに何をしてるのよ」
 リューディアは答えない。フリートの言葉に耳を傾けない。
 それがまた、フリートを怒りへと導いていく。
 リューディアとモーゼフに近づこうとするフリートの前に立ちはだかったのは、エメレンス。

「二人の邪魔はさせない。君は兄上に禁忌魔法を使ったね。さすが、メイソン侯爵家のご令嬢だ」
 フリートはギリッとエメレンスを睨みつけると同時に、そこを退けと言わんばかりに突然、氷の魔法を放ってきた。氷の矢がエメレンスに襲い掛かってきたが、それは目に見えない何かによって遮られた。
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