婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 チッと舌打ちをしたフリートは、次は目標をリューディアへと変更した。彼女は今、モーゼフにかけられた術を解いている最中。先ほどもフリートの言葉に答えなかったのは、解術を中断してしまえばその術がリューディアに返ってきてしまうからである。
 いくつもの氷の矢がリューディアへと向かって放たれた。それに気付いたエメレンスはそれを打ち落とすかのように炎の魔法を撃つ。それでも逃れた矢が一本、リューディアの肩を狙っていた。エメレンスはもう一度それ目掛けて魔法を放つが間に合わない。

「ディア」
 エメレンスが彼女の名を呼ぶ。だがリューディアはそれから避けるような素振りも見せない。

「ディア」
 間に合わない、とエメレンスが思ったそのとき、その屋は彼女の肩に触れる直前で止まった。エメレンスもフリートも驚き、じっとその矢を見つめる。
 矢を捕まえている手。それはモーゼフのもの。

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