婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 リューディアはいつでも可愛いよ、と口にしてくれる異性は、家族以外ではこのエメレンスだけだ。
「リューディア。先ほども言ったように、その美醜感覚っていうのは人それぞれなんだ。だから、君はけしてボク以外の男の前でその眼鏡を外してはいけないよ。また、心にもない言葉で君を傷つける人がいるかもしれないから」

「はい」
 リューディアは眼鏡をくいっと押し上げてから「ありがとうございます」と口にする。
 この眼鏡も、エメレンスからの贈り物である。リューディアの心を守るために、とエメレンスが出会ってすぐに贈り始めたのがきっかけ。そこから、彼女の誕生日には毎年眼鏡を贈っている。もちろん、度などは入っていない伊達眼鏡。眼鏡のデザインも様々。

「君を屋敷まで送っていこう。今日の件を、君の父上にも報告しなければならないからね」

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