2度目の人生で世界を救おうとする話。後編
3.世界の在り方
*****
聖家での平和な日々が続いていたある日のこと。
私は龍に連れられてとある山に来ていた。
聖家に来た時はまだ夏の暑さが残っていたが、もうその暑さはどこにもない。
代わりに冬の寒さを感じ始め、山々の木々は緑から赤や黄へと変化し、秋の山を彩っていた。
「紅、段差だ」
私よりも半歩ほど先を行く龍が一度足を止めて、こちらに振り向き、左手を伸ばす。
そんなことをしなくとも、このくらいの段差など、問題なく登れるのだが、先ほどから龍はこんな感じで少しでも障害物を見つける度に私に手を貸したがった。
私を小さな子どもとでも思っているのだろうか。
「ありがとう、龍」
それでも当たり前のように伸ばされる手を跳ね除けることはできず、私は毎回毎回龍の手を取ってしまう。
これはもう仕方がない。
一番最初に「いいよいいよ」と言って横を通過した時の不満げでどこか悲しそうな龍を見てしまえば、スルーなどできない。
こんな調子で私はもう1時間ほど山を登り続けていた。
そしてついに私たちは目的の山頂まで辿り着いた。