禁じられた恋はその胸にあふれだす
「はい。」

そう返事をすると、悠真君は逃げるように、診察室を出た。


「悠真君。」

私が呼び止めると、怯えた顔をしていた。

「ちょっと、思い出していたんだね。」

「事故の事を、少しね。」

私は、悠真君の背中を摩った。


「次はもっと、思い出せるといいね。」

「ううん。思い出さなくていい。」

悠真君は下を向いて、立ち止まった。

「悠真君。」


同級生の医者が言っていた。

記憶を失くした理由が、辛い過去を忘れたい場合。

それは、本人にとっても、相当のストレスになるって。


「悠真君、前に自分の事を知りたいんだって、言ってたでしょう?」

「言った。」

「その為には、辛い過去だって思い出さなきゃ……」
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