禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
氷みたいに冷たくなった指先を握りしめ、恐怖でガタガタと震え出しそうな身体を懸命に抑えこむ。隠しきれなかった怯えた表情に東藤が目ざとく気づき、「どうした清華?」と釘を刺してきた。
「な、んでも……ありません」
あ、あ、耐えなくちゃ。
「東藤さん」
九條さんの地を這うような低い声が、夫の名を呼ぶ。その声音が私を庇っているように聞こえて、ハッと彼を仰ぎ見る。すると、怒気を孕んだ誠実な紫色の双眸と視線が絡みあった。
たった一瞬のできごと。けれども、九條さんは〝私の味方〟だと確信するには十分だった。
彼はそっと私から視線を外すと、あたかも何もなかった様子で東藤のスマホを指差す。
「周波数が違うこちらもですか? 場所は玄関付近ですね」
「これは違う。うちのじゃないな」
東藤が早足で玄関に向かい、位置情報を元に飾り棚の辺りを探る。発見された小型発信機器は、ランプのプラグに付いていたソケット。
「見せてください。……この特徴から見て、中国の諜報機関が使用する『猕猴桃社』製ですね」
「『京極組』か」
「な、んでも……ありません」
あ、あ、耐えなくちゃ。
「東藤さん」
九條さんの地を這うような低い声が、夫の名を呼ぶ。その声音が私を庇っているように聞こえて、ハッと彼を仰ぎ見る。すると、怒気を孕んだ誠実な紫色の双眸と視線が絡みあった。
たった一瞬のできごと。けれども、九條さんは〝私の味方〟だと確信するには十分だった。
彼はそっと私から視線を外すと、あたかも何もなかった様子で東藤のスマホを指差す。
「周波数が違うこちらもですか? 場所は玄関付近ですね」
「これは違う。うちのじゃないな」
東藤が早足で玄関に向かい、位置情報を元に飾り棚の辺りを探る。発見された小型発信機器は、ランプのプラグに付いていたソケット。
「見せてください。……この特徴から見て、中国の諜報機関が使用する『猕猴桃社』製ですね」
「『京極組』か」