禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
反射的に出た悲鳴を、慌てて口元を覆い呑みこむ。
拳銃!? ほ、本物? だとしたら早く、けけけ警察を……!
婦人会に出ていた母と高校生の弟も、なぜここに居るのかわからない。
まさか、無理やり連れて来られたの?

極度の緊張と限界を超えた恐怖で血の気が引く。
打開策を見つけるため視線を彷徨わせると、応接用ソファの真ん中で踏ん反り返る男性と目が合った。
現在三十五歳の東藤セキュリティの二代目社長、東藤拓也だ。

「命が惜しければこれにサインしろ」

悪人の顔をした東藤に示されたのは、驚くことに婚姻届だった。

そして東藤が語り始める。
なんと東藤セキュリティは、反社会的組織や暴力団と呼ばれる裏社会と蜜月の関係にあるらしい。つまり、やばい方向でブラックな企業だったのだ!

日本の警備会社で、警察官でも自衛隊でもない警備員が所持できる護身用具は、公安委員会に申請済みの警棒くらいのもの。
防弾チョッキや防刃パネルも装備しているが、銃刀法があるため、犯人から身を守るための拳銃や刃物の所持はもちろん禁止。

だというのに、目の前の黒服の男たちは慣れた様子で拳銃を手にしている。それが何よりの証拠だった。

「警察に通報したらすぐバレると心得ておけよ。逆らわずしっかり働け」
< 3 / 70 >

この作品をシェア

pagetop