禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
高鳴る胸に『静まれ』と願うけれど、ドキドキと鼓動を早めていくばかり。
いつの間にか涙はとまっていて、私は九條さんに釘付けだった。
ときめきが、きゅうっと喉の奥に迫り上がる。

ああ、どうしよう。私……九條さんのこと――!

〝好き〟と自覚した瞬間、胸がこれ以上にないくらい熱くなり、切ない幸福感がこみ上げる。

好きになっちゃいけない人なのに。許されない、恋なのに。
心の中に次々に花が咲いていくみたいに、一度開花した想いは止められない。

溢れ出す禁断の恋心を秘密にするために、慌てて九條さんから視線を外して、ダイニングテーブルに向ける。

「そ、そうだ。冷めちゃいますから、そろそろいただきましょうか!」

熱々で持ってきたとはいえ、冷えてしまうだろう。
きゅううっと締め付けられる胸の切なさを我慢して明るく言い繕うと、急いで笑顔を笑顔を作って、膝の上で指先をきゅっと握りしめる。

「慰めてくれて、ありがとうござ――」

お礼の言葉が中途半端に萎む。九條さんが立ち上がりざまにテーブルへ両腕をついて、上半身をこちらへ乗り出した。
彼の顔が近づいて、ゆっくりと詰められた距離が……柔らかな唇が触れ合うことによって、ゼロになる。
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