禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
「……っ!」

唐突な出来事に、頭が真っ白になった。
彼は数秒触れるだけの口づけをすると、感情の余韻を残すかのようにそっと離れていく。
彼の真剣な眼差しに射抜かれ、私は真っ赤に紅潮した顔のまま、唇を両手で押さえる。

き、キスなんて、どうして?

誰かとキスをするのは初めてだった。
血液が沸騰したみたいに全身を巡っていて、何がなんだかわからない。
だけど、ひとつだけわかるとしたら、彼のキスが嫌じゃなかったということ。
それより、むしろ……っ!

ドキドキと心臓が大きく鼓動している。

「俺には……東藤があなたの〝夫〟だとは認められない。あの男は、清廉潔白なあなたの隣に並んでもいい人間じゃない」

切なげに絞り出された言葉に心臓がぐっと掴まれたように感じて、私は息を呑む。
これ以上、好きになっちゃだめ。抑えなきゃ。

「そ、うだと、しても。私の家族を守るためには、必要なことですから」

彼から伸ばされかけている手を振り払い、否定するのはつらかった。
私だって夫と認めたわけじゃない。
でも法的に婚姻関係を結んでいるせいで、愛はなくても夫婦になってしまった。
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