禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
離婚したくても、簡単にはできないのだ。
たとえ、本当に心から好きになった男性が、こうして……目の前に現れても。

「それなら、俺を利用したらいい。あなたの家族を守るために」
「九條さん……?」
「俺が、あなたやあなたの家族が東藤と縁を切れるようにする」

九條さんの端麗な相貌が切なげに歪められる。紫色の瞳は、私の身を焦がすほどの独占欲に濡れていた。

「い、嫌です! そんなの無理ですっ。だって夫は……!」

裏社会と蜜月なのだ。

「九條さんの人生まで、私のせいでめちゃくちゃになっちゃう。そんなの、いや」
「大丈夫。俺を信じて」

彼の真剣な声と正義感に心を揺さぶられる。

新聞のコラムで明かされていた九條家の御曹司の顔は、彼のほんの一部に過ぎないのだろう。だって簡単に東藤の懐に入り込んで信頼を得て、たった三日でこんな時間を作らせてしまう人なんて、きっと一般人じゃない。

公安の警察官か、東藤よりも地位のある裏社会の人間。
でも、そんな人がなんで?

「どうして、そこまでしようとしてくれるんですか……っ」
「理由なんかひとつしかない。……俺の人生がめちゃくちゃになっても構わないくらい、俺はあなたが欲しい」

……それは、九條さんが私を好きってこと?
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