禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
俺はまず、倉庫群を賃借りするために奔走した。
ダミー企業を作り上げ、その名義で盈水會の管理下に置く。これで取引全てを公安が把握し、セイカ警備がシロだと証明できるようになる。

清華が住まわされている自宅の隣が、空き物件だったのは不幸中の幸いだった。
こういう奴らは普通フロアごと買い上げる場合が多いが、東藤には五億を超える物件をもうひとつ押さえる資金力はないらしい。
そうして準備を重ねていく。最終的には彼女との関わりは最低限に、東藤を逮捕するのが目標だった。

ようやく接触できた彼女の姿は、随分と憔悴しきっていた。
顔色は白く、恐怖にさらされ続けた人形のように強張った表情。取り繕う仕草。嫌でももう限界なのだと察せられてしまう。
だというのに。

「あの、コラム拝見していますっ」

俺は人知れず息を呑む。
辛い境遇の中、大きな黒い瞳をキラキラとさせて見上げてきた彼女に――希望を失わず強く前を向き続けている彼女に虚をつかれ、俺はいつのまにか心臓を鷲掴みにされていた。

新聞だけが彼女の元へ届けられているのは調査済み。少しでも気を紛らわせられるものをとコラム欄を買収した俺は、あの激務の中、彼女のためだけに嘘偽りなく文章を綴っていた。
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