禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
今日はその、週に二回の食材が届く日。それと一緒にポストから数日分の新聞も受け取れる。

新聞が届くのは、『パーティーで連れ歩いた時に、お前が無知すぎると自慢し甲斐がない』という東藤の極めて自分本位な理由から。
けれども、スマホからはSIMカードが抜かれ、wi-fiもテレビもない生活の中、新しい食材と新聞だけが唯一の楽しみで、心の拠り所だった。

自室の鏡に映る私は、一ヶ月前より痩せた気がする。幼い顔つきに見える大きな瞳の下には、白い肌に目立つ濃い疲労が滲んでいた。
でも、貴重な外出の機会。精神衛生のために、強引にでも気分転換しなくちゃならない。

胸元まである長い栗色の髪を左右で編み込んで、ハーフアップにしていく。それから化粧を整え、先月友人とお揃いで購入した夏の新色の口紅を、そっと小さな唇に乗せた。

部屋着から、母が昨年の誕生日に買ってくれた華やかなワンピースに着替える。お気に入りのこれも、もうロビーにしか着て行けないと思うと悲しくなるけれど、着れるだけマシだ。

「よしっ!」

気合いを入れてから家を出る。一瞬を満喫せねばならない。
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