禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
エレベーターで最上階から一階へ降り、レセプションへ向かう。
このマンションの警備は全て東藤セキュリティが請け負っている。なので、至るところにある監視カメラは東藤にチェックされていると言っていい。
煌びやかなエントランスに立っている警備員たちも、親切そうな顔をして私を監視していた。

そそくさとロビーを通り抜けた私は、コンシェルジュの女性に「おはようございます」と話しかける。

「東藤です。今日の荷物はもう届いていますか?」
「おはようございます、東藤様。はい、こちら届いておりますよ」

引きつる笑顔とともに、自ら〝東藤〟と名乗るのは嫌悪感しかない。けど、仕方がない。彼女達もやばい会社から派遣されている可能性があるから気を抜けないのだ。
荷物を受け取り、次はロビーの奥にある郵便ポストへと向かう。
何やら引越し業者が出入りしているのを横目に新聞を取っていると、ふと手が何かにぶつかった。

「ああ。すみません」

頭上から降ってきた低く耳触りの良い男性の美声に驚き、私はビクリと大袈裟なくらい肩を揺らす。いつのまにか隣に人がいたらしい。
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