禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
「そうでしたか、残念です。今夜は飲み明かせると思ったのですが」
「ははは。それなら妻を泊まらせてやってくれるかい? 九條君のご好意を無駄にしたくないからなぁ」
「では奥様、せっかくですからぜひ」
「えっ? は、はい。ありがとうございます」

棗さんからカードキーを受け取った私を残し、東藤は上機嫌でホテルを出て行く。
それを鋭い視線で見つめていた棗さんは、そばに控えていた彼の男性秘書に目配せをすると、私の手からカードキーを抜き去った。

彼は紫色の瞳を悪戯っぽく細めて私を見下ろしてから、そっと耳元に唇を寄せる。

「今夜はここで俺を待っていて」

甘くて低い声が色っぽく囁く。
彼が新しく私に握らせたのは、ホテル最上階にあるロイヤルスイートルームのカードキーだった。

「あっ」

どうしよう。頬が一気に熱くなる。ドキドキと心臓が高鳴って仕方なかった。
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