禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
九條さんはスマートに名刺を取り出して、こちらへ差し出した。
どこか冷徹で無感情な、他人を寄せ付けない孤高の雰囲気に気圧されつつ、それを丁寧に受け取って視線を手元に落とす。しかし、その直後。
【九條国際貿易株式会社 代表取締役社長】と書かれていた名刺に私は目をぱちくりして、思わず「えっ!」と感嘆の声を上げた。
「あの、コラム拝見していますっ」
不幸ばかりの中に舞い込んだ小さな幸運に、密かに胸を踊らせた私は、キラキラとした尊敬と憧憬の眼差しを彼へ向ける。
その視線を真正面から受けた彼は、わずかに目を見張った。冷たさが消えた紫色の瞳は、毒気を抜かれた様子できょとりと私を見下ろしている。
「そうですか」
「最近、一番の楽しみなんですよ」
政略結婚をして一ヶ月、娯楽といえば新聞しかない。
ちょうど現在、新聞では十二日間に渡って【北欧と僕と貿易】という九條さんの半生を交えたコラムが連載さてれいる。
確か年齢は三十一歳。お祖母さまが英国出身で、ご自身も幼い頃から海外で過ごすことが多かったとか。
どこか冷徹で無感情な、他人を寄せ付けない孤高の雰囲気に気圧されつつ、それを丁寧に受け取って視線を手元に落とす。しかし、その直後。
【九條国際貿易株式会社 代表取締役社長】と書かれていた名刺に私は目をぱちくりして、思わず「えっ!」と感嘆の声を上げた。
「あの、コラム拝見していますっ」
不幸ばかりの中に舞い込んだ小さな幸運に、密かに胸を踊らせた私は、キラキラとした尊敬と憧憬の眼差しを彼へ向ける。
その視線を真正面から受けた彼は、わずかに目を見張った。冷たさが消えた紫色の瞳は、毒気を抜かれた様子できょとりと私を見下ろしている。
「そうですか」
「最近、一番の楽しみなんですよ」
政略結婚をして一ヶ月、娯楽といえば新聞しかない。
ちょうど現在、新聞では十二日間に渡って【北欧と僕と貿易】という九條さんの半生を交えたコラムが連載さてれいる。
確か年齢は三十一歳。お祖母さまが英国出身で、ご自身も幼い頃から海外で過ごすことが多かったとか。