魔王様の花
物は壊したらだめです
神様なんていない。


今日まで信じていた神様と、心の中でひっそり別れを告げた。



目の前にいる長身のひょろりとした男――顔は笑っているが、目がまったく笑っていない。中性的な容姿で、学園カースト上位の先輩にあたる人だ。


「お気に入りのピアスだったんっすけどねぇ? 希少価値の高い石使ってるんで」

「ごめんなさい」

「はは、見事な棒読み。あんた全然悪いって思ってないでしょ―」

「ななな、何言ってるんですかあ! そんな事全然これっぽっちも……あります」


嘘をつけないのが災いして、数秒で撃沈。



「――まさか。まさか、謝ってハイ終わりじゃありゃしませんよね? 面白い事思いついたんで、明日ここへ来てくださいよ」



甘いマスクに浮かぶあやしい笑み。


もう、逃げられない。

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