男達が彼女を離さない理由
 え? 待てよ? スーパーで買い物して彼女の部屋に向かった? てことは彼女の家はあっち方面にあるわけか。物理的な距離が縮まったぞ。
 公平さを期すために、俺んちはあっちなんです、と指さして言ってみた。
「あら、ご近所さんでしたか」
 と彼女は笑った。あっちとそっちだと町名が違うが、自宅最寄駅が同じというのは一段階進んだ気がして嬉しい。
「今度は俺を招待して下さいよ。夕飯の材料費は出します。あ、俺んち来て料理して欲しいかも」
「良いですよ。朝食でも昼食でも夕食でも、作りに行きます」
 思わず、ありがとうございますと頭を下げてしまった。
 自分でも料理をしない訳ではないが、下手に食材を買ってしまうと使い切れないことが多いのと後片付けの煩わしさから、月に数回作るに過ぎない。冷蔵庫にはレンジ調理するレトルトしか入っていない。
 8番目というのは付き合いの程度が8分の1というわけではないのだから、「朝昼晩」の食事を共にして一気に進展というのもありだな、と妄想が膨らむ膨らむ。
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