線香花火の初恋【短編】
「本当に、思い出にしまっておきたかったの。いつも仲良くしているわけでもない、ただのクラスメイトに恋をして、儚く散るくらいなら。その姿に目を焼き付けるくらい、わがままじゃないでしょって。関係性なんて、いつの間にか出来上がっているものでわたしたちにはなにもなかった。私たちがなにかをきっかけで話すには、共通点が欲しかったけどなにもみつけられなかった」

恋人の前に、知人ですらないんだもん。そう吐き出された言葉は、あまりにも自虐的だが正論だった。俺たちは見はしていたが、中身は本当になにもしらないのだ。
視覚からわかる情報のことしか、俺たちは知らないんだ。

「岸田君は古文の授業が苦手で、いつも別の授業の宿題をその時間にあててるとか、食堂のメニューはからあげ丼が一番好きとか、そういうことしかわからないの。とても浅いところでしか、君を好きになっていないから…だから私の恋心が知られた時、絶望的な気分になった。もし付き合っても、すぐ別れてしまう気がして。この恋は宝物だったから、岸田くんにさえこわされたくなかった」
< 23 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop