線香花火の初恋【短編】
彼女は怯えているようだった。でも俺は反対に顔が熱くなる。
ガラス細工のような繊細な恋心は全部俺で構成されている、その事実に。

「馬鹿だなあ」

優しく頭を撫でた。彼女のふんわりした栗毛が指に絡んで気持ちがいい。彼女が俺を見つめる。頬が紅潮して、潤んでいていつも俺をみている瞳だった。

「馬鹿だなあ」

愛おしさが爆発しそうで、再度言った。彼女は分かりやすく、むくれて、不満そうに眉根を寄せた。

「だって、岸田君、あの時彼女いたじゃん」

彼女がいたことを知られていたのか。それよりも。

「俺その時すでに別れていたけど?」

「え、嘘、だって」

彼女はあきらかに狼狽えた。情報が錯綜している。
諦めたように、彼女は脱力しながら言った。

「私のせい、だとも思って」

俺たちは本当に言葉が足りてなかった。目は口ほどに雄弁に語ってはいたけれど。

「全然違う。本当に違う。俺が好きなのは花本だよ」
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