線香花火の初恋【短編】
「ごめん、勘違いだったら悪いんだけど…」
歯切れの悪い言葉で、背中に冷汗が流れた。
硬直してしまって、次の口の動きがなにを言わんとしているのかわかった。
「俺、のこと好きなの?いつも、目が合うから…」
気が付けば、見ている。自覚はあったが、まさか本人にそのことを指摘されると思っていなかった。でも瞳を見ているから相手も気づくだろう。当たり前なのだ。当たり前のことを気づかなかった。少しでも目を逸らしたかったが、彼はそれを許さない。誰もいない教室で、私だけに視線を注いでいて。口の中がカラカラになる。じっとりと汗をかいて、背中が冷たい。
私は嘘はつけないと思った。でも洗いざらい話したくないなと思った。
「瞳が、好きなの」
「目?」
「素敵な瞳してて、いつも綺麗だなあって思っていたの」
嘘はついていない、まず瞳に一目ぼれしてそこからストーキングのように見つめていたのだから。この恋は宝物だった。壊したくなくて、思い出にしておきたい素敵なもの。
花本若菜にとって、初恋だった。色々な友人から、告白に至るまでの経緯、結果、その後までたくさん聞いてきた。聞いてきたうえで、壊したくなかった。
初恋は叶わない、一番この世で無垢な想いを当事者だろうと失恋というものに自分の意思でもないのに壊されたくなかった。