線香花火の初恋【短編】
岸田君も固まっていた。顔を赤らめて。勘違いが勘違いでなく、はっきりとした言葉で返ってきたからだろう。

「花本、俺…」

その言葉に続く言葉は予想できる。でもそれを聞いたら、私の思い出は綺麗なものにならないから。

「でも、見ているだけでいいの。綺麗だなって。でもばれてしまったんなら、気持ち悪いよね。ごめんね、彼女もいるのに」


そう、岸田君にはサッカー部のマネージャーで先輩の彼女がいる。いつも明るくて、誰よりも溌剌とした私とは違うかわいい彼女が。私は身の程を弁えている、みんなが羨ましがるカップルに亀裂をいれる悪い女ではないのだ。ただ、この初恋を心の奥底に今後閉じ込めるために今、必死に目に焼き付けているのだから。

彼は絶句したように、こちらを見ていた。知られていた上で見られていたという気持ち悪さからかなんなのか。そしてこちらに近づいてくる岸田君は、怒ったように口を真一文字に結び、睨みつけるように、私を貫いた。その鋭さに、身体がすくむ前に思わず立ち上がった。そして、直ぐ荷物を持ち、教室の扉のほうに駆け出したがもう直ぐに迫っていた岸田君に捕まれる。振りほどけない、存分、力が強い。
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