線香花火の初恋【短編】
「お前自分の気持ちだけいって、逃げるのか」
「放してほしい、お願い」
「俺の言葉も聞かずに?随分勝手だなあ」
いらついた口調で、バカにしたように笑った。腕を掴む力がどんどんと強くなり、思わず顔を顰めると、正気にもどったのか悪いといって手を放すとそのすきに振りほどいて廊下に駆け出した。彼は追ってこなかった。それが寂しいとかは感じなかった。どうか今まで通り、元に戻りますように。そんなことを思いながら走った。誰もいない廊下を、ただひたすらに。