線香花火の初恋【短編】
「私はうまいことやってるよ。で、青春もしている」

「そっか」

愛ちゃんはお弁当の卵焼きをつつきながら、そういえばと思い立ったように言う。

「もう関係ないかもしれないけど、岸田君別れたらしいよ」

「え」

「先輩と」

先輩と、別れた。岸田君の爽やかで彼女と手を繋いでいた晴れやかな笑顔が蘇った。

「若菜、パン落しているよ」


罪悪感と、僅かな期待があったのかもしれない。でも罪悪感が大きかった。
卒業までその視線から逃れようと必死だった。二年連続同じクラス。

しかし、その視線がなくなると、今度は私が見てしまうのだ。なんというイタチごっこ。私はなんて質の悪い女なのだろうと自己嫌悪に陥っていた。だって、その視線に気づくのは誰よりも岸田君だったのだ。彼は怒りのような激情を目に宿していた。それすらも綺麗と思ってしまうのは末期である。そのたびに目を伏せ、背けてもらえるまで俯いた。
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