私の恋心と彼らの執着
「あの店、予約してくれてるんでしょ?」
「ああ、うん」
「楽しみー」
手づかみシーフードで人気の店に行ける楽しみを、ちょっと大げさなぐらいに口に出した私の目は、その時たまたま視界に入ったある方向に、釘付けになった。
ほぼ同時に、足が止まる。
「どうした?」
急に立ち止まった私の、視線の方向を文隆も見たのだろう。
はっと、息を吸い込む音が頭の上で聞こえた。
視線の先、車道を挟んだ向こうの歩道を歩いているのは、親子連れの3人。
5歳ぐらいの男の子が、歩きながら父親にくっついて甘えている。
それを隣の母親が、たぶん少し窘める言葉を言いながらも、微笑んで見ている。
休日にありふれた、幸せそうな家族の外出風景だ。
その3人から目が離せないでいる理由は、他でもない。
父親の男性が、彼──紀野課長だからだ。
子供にまとわりつかれている彼は、決して嫌そうではなかった。
それどころか嬉しそうだ。
さらに、彼らをにこやかに見つめている女性は、お腹が大きかった。
ぱっと見てわかるくらいの大きさなのだから、経験はないけど、7ヵ月とか8ヵ月とか、それぐらいにはなるのではないだろうか。
突然、目の前が真っ暗になる錯覚に襲われた。