私の恋心と彼らの執着
「ありがとう。……ちょっと落ち着いた」
「そうか」
しばらく、沈黙が続いた。
お互いに言わずにいることが何なのかわかっているから、逆に居心地が悪い。
「……言わないの」
「何を?」
「見てたんでしょ、……あの人たち」
「見たけど、それが?」
若干突き放すような言い方をされて、自嘲の感情が湧き起こる。
その感情の勢いのままに、私は言葉を吐き出した。
「自業自得だって、思ってるんでしょ。
私だって思ってるわよ。……私は本気の相手じゃないんだって、そんなのとっくにわかってた。だけど」
声大きい、と文隆に囁かれて、口を一度閉ざす。
「──ちょっとは執着してくれてるって、思いたかったの。
1年付き合ってきたんだもの。少しぐらいは、向こうより、優先してくれる気持ちはあるんじゃないかって……でも違ったね」
「あの人、家族の前ではあんなふうに笑うんだ。奥さんも、子供も幸せそうだった。裏切りなんか、かけらも感じさせてないんだろうね」
「……私、さっき初めて、奥さんと子供の顔見たの。
写真見るかって言われたことあるけど、見なかった。
見たくなかったから。
現実にいる人たちだって、たぶん、認識したくなかったんだと思う──バカだよね、そんなふうに目をそらしたって、現実は変わらないのに」