私の恋心と彼らの執着

 そんなふうに自分語りをしているうちに、なんだか可笑しくなってきた。
 私を毎週抱きながらあの人は、奥さんとも仲良くしていたんだと思うと、自分が本当にバカみたいに思えてきたから。

 いや、みたい、じゃなくて確実にバカなんだ。

 彼に奥さんがいるのをわかっていて、付き合った。
 そして一度だって、奥さんと仲が悪いなんて話は聞いたことなかった。それが示す意味を察していながら、別れなかった。

 はじまりの段階から、私ひとりが目をそらしていただけだった。私だけが。

 文隆もさぞかし呆れているだろう。今さらだけど。
 そう思って隣を見ると、予想外にどういうわけか、私をいたわるような表情をしていた。文隆が彼のことを話す時──特に「もうやめろ、別れろよ」と言う時にはいつも、苦虫を噛みつぶしたみたいな顔をしているのに。

 のばされた指に頬を拭われて、はっとする。
 ……私、気づかないうちに泣いていた?

「本気で好きだったんだな、あいつのこと」

 ひどく優しい口調で言われて、何かの抑えがなくなったような心地がした。

 ぼろっと、大粒の涙がこぼれ落ちて頬をつたう。

「──そうみたい。自分でも、こんなに本気になってたなんて、思わなかった……」

 恋心はほとんどなくなっていると思っていた。
 私から別れを切り出さないのは、意地みたいなものだと。
 だけど、違った。

 恋心がいつからか、それより深い感情に変わっていただけ。

 ……あの人を、愛していた。
 だから手放したくなかった。
< 24 / 31 >

この作品をシェア

pagetop