私の恋心と彼らの執着

 自分の本心に気づいたところで、どうにもならない。
 あの人には家庭を壊す気はないのだろうから。

 ……私も、そんなことはしたくない。
 そんなことはできない。
 あの男の子と奥さんの、笑顔を曇らせる権利は誰にもないのだ。

 次の水曜の夜。
 いつものようにホテルに行き、部屋に入ったところで。

 別れてください、と私から言った。

「……なんだ、いきなり」
「いきなりじゃないです。……ずっと、考えてました」

 少し驚いたように反応した彼に、私は、半分だけ嘘をついた。

 いつか、どちらかがそう言わなければいけない日が来るとは思っていたけど、頭の片隅にいつも追いやっていた。
 彼はどうだかわからないけど、私はずっと、踏ん切りをつけるのを避けてきた。

 そうしてきた本当の理由に、ようやく気づいた。皮肉にも彼の家族を見ることで。
 でも、理由を口にする気はない。

 愛してます、なんて言ったところで、どうなる?
 仮に彼の気持ちが同じであろうと、察している通りに離れていようと、どちらに転んでも良いことはない。さらなる泥沼に落ちて自分が惨めな思いをするだけだ。

 沈黙がしばらく続いた後。
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